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夏に飲みたいお茶の考え方

夏に飲むお茶を考えるとき、まず思い浮かぶのは「冷たいお茶」かもしれません。

冷たい煎茶。
麦茶。
水出し緑茶。
ほうじ茶。
ルイボスティー。
ミントティー。

どれも夏らしい飲みものですが、夏のお茶選びは、冷たいかどうかだけでは決まりません。

暑い時期には、汗、水分、カフェイン、電解質、体温調節が関わります。お茶は水分補給の一部になりますが、熱中症対策そのものをお茶だけで完結させることはできません。環境省や政府広報も、熱中症予防では暑さを避けること、水分補給、塩分補給をあわせて行うことを呼びかけています。

この記事では、夏に良いお茶を、味や風情だけでなく、成分と身体の関係から整理します。

夏のお茶で見るべき3つの軸

夏のお茶は、次の3つの軸で考えると選びやすくなります。

1. チャノキ由来のお茶か
2. カフェインを含むか
3. 塩分や電解質をどう補うか

チャノキ由来のお茶とは、煎茶、玉露、抹茶、ほうじ茶、番茶、紅茶、烏龍茶など、チャノキの葉から作られるお茶です。

これらには基本的にカフェインが含まれます。農林水産省も、日本茶に含まれる成分としてカテキン、テアニン、カフェインなどを取り上げています。

一方、麦茶、ルイボスティー、カモミール、ミント、ハイビスカスなどは、チャノキ以外の植物を用いた飲みものです。日本では「茶外茶」と呼ばれることもあります。多くのハーブティーや茶外茶はチャノキを使わないため、一般にカフェインを含まないものが多いですが、マテ茶のように例外もあります。

この違いを押さえると、夏のお茶はかなり選びやすくなります。

チャノキ由来のお茶:カフェインをどう見るか

煎茶、玉露、抹茶、紅茶、烏龍茶などにはカフェインがあります。

カフェインというと、夏には「利尿作用で脱水が心配」という話が出ます。これは完全な誤解ではありません。カフェインには利尿作用があります。

ただし、通常の飲み方で、お茶やコーヒーがただちに脱水を起こすと考えるのはやや単純です。研究レビューでは、通常の茶やコーヒーに含まれる程度のカフェイン量では利尿作用が見られない、または限定的とされます。別のメタ分析でも、カフェインの利尿作用は小さく、運動時には打ち消されるとまとめられています。

つまり、夏にお茶を飲むときの考え方は、次のくらいが現実的です。

適量の緑茶や紅茶:水分補給の一部になる
大量の濃いお茶:カフェイン摂取量に注意
寝る前や体調不良時:茶外茶や麦茶に切り替える
炎天下・大量発汗時:お茶だけでなく塩分補給も見る

カフェインがあるから夏のお茶は避ける、というより、どの時間帯に、どれくらい飲むかを考える方が実用的です。

カフェインは体温を下げるのか

ここは少し丁寧に見る必要があります。

「カフェインは体温を下げる」と単純に言い切るのは危険です。

カフェインには中枢神経を刺激する作用があり、眠気を覚ましたり、活動性を上げたりする面があります。お茶の淹れ方でも、カテキンやカフェインは高温で抽出されやすい成分として説明されています。

体温調節との関係では、カフェイン摂取が発汗感受性を高める可能性を示した研究があります。ただし、その研究では同時に、カフェインが熱産生を通じて鼓膜温や平均体温を上げたことも報告されています。近年の暑熱環境下での研究でも、カフェイン摂取が体温調節に不利に働く可能性が示されています。

したがって、夏のお茶においては、こう捉えるのが安全です。

カフェインそのものを「身体を冷やす成分」とは考えない
発汗や覚醒には関わるが、暑熱環境では過信しない
身体を冷やす基本は、涼しい環境、水分、塩分、休息
お茶はその中の一部として楽しむ

熱いお茶を飲むことで発汗が促され、汗が蒸発できる環境なら涼感につながることはあります。しかし、日本の夏のように湿度が高く、汗が蒸発しにくい環境では、汗をかけば必ず冷えるとは限りません。環境省の熱中症情報でも、湿度が高いときや風がないときは注意が必要とされています。

夏のお茶は、体温を下げる薬ではありません。

気分を整え、水分をとり、食事や休憩と組み合わせるための飲みものです。

夏に使いやすいチャノキ由来のお茶

水出し緑茶

夏のチャノキ由来のお茶として、まず使いやすいのは水出し緑茶です。

水出しにすると、熱湯で淹れたときよりも渋みや苦みが穏やかになりやすく、冷たい飲みものとしても飲みやすくなります。農林水産省は、うま味成分であるテアニンなどのアミノ酸は比較的低い温度でも出る一方、渋み・苦みの成分であるカテキンやカフェインは80度以上の高い温度で出やすいと説明しています。

水出し緑茶は、夏の昼間に向いています。

冷たい
渋みが穏やか
食事にも合わせやすい
緑茶の香りが残る

ただし、カフェインがゼロになるわけではありません。寝る前やカフェインを控えたいときは、茶外茶に切り替えるのがよいでしょう。

ほうじ茶・番茶

ほうじ茶や番茶は、緑茶の中でも日常向きです。

ほうじ茶は香ばしさがあり、冷やしても飲みやすいお茶です。番茶は軽い飲み口で、食事にも合わせやすいお茶です。

ただし、これらもチャノキ由来である以上、カフェインを全く含まないわけではありません。カフェイン量を完全に避けたい場合は、麦茶やルイボスティーのような茶外茶を選ぶ方が明確です。

夏場にほうじ茶を使うなら、次のような場面が合います。

冷房の効いた部屋で温かく飲む
食後に香ばしく飲む
冷やしてすっきり飲む
甘い菓子と合わせる

夏でも、冷たい飲みものばかりで胃が重くなることがあります。そういうときに、温かいほうじ茶は休符のように使えます。

茶外茶・ハーブティー:カフェインを抜きたい時間に使う

夏のお茶を考えるうえで、茶外茶は非常に使いやすい存在です。

茶外茶とは、チャノキ以外の植物を使った飲みものです。麦茶、ルイボスティー、黒豆茶、とうもろこし茶、カモミールティー、ミントティー、ハイビスカスティーなどが含まれます。

多くはカフェインを含みません。つまり、チャノキ由来のお茶とは役割を分けられます。

麦茶

夏の茶外茶として最も身近なのは麦茶です。

麦茶はノンカフェインの夏の定番として扱いやすく、食事にも合わせやすい飲みものです。

香ばしさがあるため、冷やしても味がぼやけにくい。
子どもから大人まで飲みやすい。
水代わりに日常へ入れやすい。

夏の常備茶としては、非常に安定しています。

ルイボスティー

ルイボスティーは、南アフリカ原産の植物から作られる茶外茶です。

ノンカフェインで、少し甘みのある香りがあり、冷やしても温かくしても飲みやすいお茶です。

夏場には、夜の飲みものとして使いやすいです。

カフェインを避けたい夜
冷たい飲みものを控えたいとき
麦茶以外の常備茶がほしいとき

麦茶より少し香りに個性があるので、気分を変えたいときにも向いています。

ミントティー・ハイビスカスティー

ハーブティーは、味や香りで選ぶ楽しさがあります。

ミントティーは、香りの清涼感が強く、夏に向いています。冷たくしてもよく、食後にも合います。

ハイビスカスティーは、酸味があり、冷やすとかなり夏らしい飲みものになります。酸味が強い場合は、はちみつや果物と合わせてもよいでしょう。

ただし、ハーブティーは植物によって成分が異なります。薬を飲んでいる人、妊娠中の人、体調に不安がある人は、素材や注意表示を確認してください。茶外茶は「何でも安全」という意味ではなく、「チャノキ由来のカフェインから離れられる選択肢」と考えるのがよいです。

夏のお茶の使い分け

夏は、時間帯でお茶を分けると使いやすくなります。

場面向いているお茶理由
水出し緑茶、煎茶すっきり始めやすい
水出し緑茶、麦茶食事や水分補給に合わせやすい
外出前後麦茶、薄めの緑茶飲みやすく量をとりやすい
夕方ほうじ茶、ルイボスティー香ばしさや落ち着きがある
麦茶、ルイボス、カモミールカフェインを避けやすい
甘いものと合わせるほうじ茶、煎茶、麦茶菓子との相性がよい

大切なのは、どのお茶が絶対に良いかではありません。

カフェインをとってよい時間か
汗を多くかいたか
塩分補給が必要か
食事と合わせるか
寝る前か

この条件で選ぶことです。

熱中症対策では「塩」も見る

ここまでお茶の話をしてきましたが、夏の身体を考えるなら、水分だけでなく塩分も重要です。

汗をかくと、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失われます。環境省の熱中症環境保健マニュアルでも、汗をたくさんかいた場合は塩分補給を忘れないこと、スポーツドリンクや食塩水などを用いることが示されています。

政府広報も、熱中症予防行動として、こまめな水分・塩分補給を挙げています。

つまり、お茶は水分補給の一部になりますが、汗を多くかいたときは、それだけでは足りない場合があります。

軽い日常:お茶や水でこまめに水分補給
汗を多くかいた:塩分も補う
運動・炎天下:スポーツドリンクや経口補水液も検討
体調不良:涼しい場所へ移動し、無理をしない

熱中症が疑われるときは、菓子やお茶でどうにかしようとせず、涼しい場所へ移動し、身体を冷やし、水分・塩分補給を行い、必要に応じて医療機関へつなぐことが大切です。

お茶に合わせる、塩のある菓子

日常の夏の茶時間では、塩を含む菓子を合わせるのも一つの方法です。

もちろん、菓子は熱中症治療のためのものではありません。
しかし、冷たいお茶と一緒に、塩味のある和菓子や菓子を少し添えると、夏の茶時間として理にかなった形になります。

赤穂の塩味饅頭

塩の菓子としてまず挙げたいのが、兵庫県赤穂の塩味饅頭です。

赤穂は塩と縁の深い土地で、塩味饅頭は赤穂伝統の銘菓として知られています。赤穂観光協会の情報では、元祖播磨屋が1853年に塩味饅頭を創製し、藩の御用菓子司を務めたと紹介されています。

こしあんの甘さと塩の風味が合わさるため、冷たい煎茶や水出し緑茶とよく合います。

夏に食べるなら、甘さで疲れをほどき、塩味で輪郭をつける菓子として楽しめます。

塩羊羹

塩羊羹も、夏に扱いやすい菓子です。

羊羹は小さく切って食べやすく、持ち運びやすいものもあります。近年は、塩分補給を意識した塩羊羹も販売されています。たとえば金沢の老舗・森八は、能登の粗塩を使った塩羊羹を「おいしく塩分補給」として紹介しています。

冷たい麦茶やほうじ茶と合わせると、甘さと香ばしさのバランスが取りやすくなります。

塩せんべい・サラダせんべい

甘いものが苦手なら、塩せんべいやサラダせんべいもあります。

米菓は、冷たいお茶と合わせやすく、軽い塩気も取り入れやすい菓子です。塩せんべいという名前の商品では、米の粒感、塩、醤油などを生かしたものも販売されています。

煎茶、番茶、麦茶、ほうじ茶のいずれにも合わせやすく、夏の茶請けとして実用的です。

塩昆布、梅干しも「茶請け」として見る

菓子ではありませんが、塩昆布や梅干しも、お茶と合わせる塩分のある食べものです。

熱い煎茶に塩昆布。
冷たい麦茶に梅干し。
ほうじ茶に小さな漬物。

これは、単なる水分補給ではなく、食文化としても自然な組み合わせです。

夏の茶時間は、甘い菓子だけでなく、塩気のあるものを少し添えることで、身体にも味覚にも納まりがよくなります。

夏のおすすめの組み合わせ

最後に、夏のお茶と茶請けの組み合わせを整理します。

お茶合わせたいもの向いている場面
水出し緑茶塩味饅頭、塩羊羹午後の休憩
麦茶塩せんべい、梅干し外出後、食事前後
ほうじ茶塩羊羹、米菓夕方、冷房の効いた部屋
ルイボスティー塩気のあるナッツ、軽い菓子夜、カフェインを避けたいとき
ミントティー柑橘、軽い塩菓子食後、気分転換
ハイビスカスティー果物、塩を少し効かせた菓子酸味を楽しみたいとき

夏に大切なのは、「冷たい飲みものをたくさん飲む」だけではありません。

汗をかく。
水分を失う。
塩分も失う。
カフェインの有無を考える。
時間帯で飲みものを変える。

その中に、お茶をどう置くかです。

まとめ

夏のお茶は、三つに分けて考えると分かりやすくなります。

まず、煎茶やほうじ茶などのチャノキ由来のお茶。
これらはカフェインを含みますが、適量であれば水分補給の一部になります。過剰に恐れるより、量と時間帯を考えるのが現実的です。

次に、麦茶、ルイボスティー、ハーブティーなどの茶外茶。
これらはカフェインを避けたい時間に使いやすく、夏の常備茶や夜の飲みものとして便利です。

そして、塩分補給。
熱中症対策では、水分だけでなく塩分も大切です。特に汗を多くかいたときは、塩分を含む飲料や食品を合わせて考える必要があります。

夏のお茶は、涼を取るだけのものではありません。

緑茶で目を覚ます。
麦茶で日常を支える。
ハーブティーで夜を整える。
塩の菓子で汗の後を補う。

そう考えると、夏の茶時間は、ただ冷たいだけでなく、少し賢く、少し豊かになります。