日本茶入門:煎茶、玉露、抹茶、ほうじ茶まで一通りわかる基礎案内
日本茶は、身近にありすぎるために、かえって全体像が見えにくい飲みものです。
煎茶、玉露、抹茶、ほうじ茶、玄米茶、番茶。
名前は聞いたことがあっても、何がどう違うのかを説明するのは意外と難しいものです。
この記事では、事前知識のない人でも日本茶の地図を持てるように、日本茶の種類、製法、味わい、淹れ方、選び方を一通り整理します。
日本茶とは何か
日本茶という言葉は、広くは日本で作られるお茶を指します。
その中心にあるのが緑茶です。
緑茶は、茶葉を摘んだあと、加熱によって酸化発酵を止めて作られるお茶です。農林水産省も、煎茶を「新芽を蒸して揉んで乾燥させて製造する、最も一般的に飲まれるお茶」と説明しています。
お茶の葉そのものは、基本的には「チャノキ」という植物から作られます。
緑茶、烏龍茶、紅茶は、もともとの植物が全く別というより、摘んだ後の加工方法の違いによって大きく分かれます。日本茶の中心である緑茶は、茶葉の酸化を止めることで、緑色や爽やかな香り、うま味を残しやすくしたお茶です。
日本茶の大きな見取り図
日本茶を理解するうえで、まず押さえるとよい軸は次の5つです。
1. 蒸すか、炒るか
2. 日光を当てるか、覆って育てるか
3. 揉むか、揉まないか
4. 焙じるか、焙じないか
5. 玄米などを混ぜるか、混ぜないか
この組み合わせで、煎茶、玉露、抹茶、ほうじ茶、玄米茶などの違いが生まれます。
たとえば、煎茶は摘んだ茶葉を蒸し、揉み、乾燥させて作る代表的な緑茶です。玉露やかぶせ茶は、収穫前に日光を遮って育てる被覆栽培が関係します。抹茶の原料になるてん茶は、日光を遮って育てた茶葉を蒸したあと、揉まずに乾燥させる点が特徴です。
代表的な日本茶の種類
煎茶
煎茶は、日本で最も一般的に飲まれている緑茶です。
摘んだ新芽を蒸し、揉み、乾燥させて作ります。香り、渋み、うま味のバランスが取りやすく、日常のお茶として広く親しまれています。農林水産省も、煎茶を緑茶の中で代表的なお茶として紹介しています。
煎茶は、淹れ方によって味が大きく変わります。
低めの温度で淹れると、うま味や甘みが出やすくなります。
高めの温度で淹れると、香りや渋みが出やすくなります。
つまり煎茶は、同じ茶葉でも「やわらかく飲む」ことも、「きりっと飲む」こともできるお茶です。
深蒸し煎茶
深蒸し煎茶は、通常の煎茶よりも長めに蒸して作るお茶です。
日本茶インストラクター協会の解説では、普通煎茶に比べて生葉の蒸し時間を2〜3倍長くするため、茶葉の形状は細かくなり、渋味が抑えられ、濃厚な味になりやすいと説明されています。
水色は濃く出やすく、味もまろやかで、初心者にも飲みやすいことがあります。
急須で淹れると細かな茶葉が出やすいので、深蒸し用の茶こしが付いた急須を使うと扱いやすくなります。
玉露
玉露は、収穫前に茶園を一定期間覆い、日光を遮って育てた茶葉から作られる高級茶です。
農林水産省は、玉露について、収穫前に被覆資材で茶園を20日程度覆った被覆栽培を行い、新芽を蒸して揉んで乾燥させて製造すると説明しています。
日光を遮ることで、渋みが抑えられ、うま味を強く感じやすいお茶になります。
玉露は高温で淹れるより、低めの温度でゆっくり抽出するのが基本です。農林水産省の淹れ方資料でも、玉露は低温の湯で淹れることがポイントとされています。
少量を、濃く、ゆっくり味わうお茶です。
かぶせ茶
かぶせ茶も、玉露と同じく日光を遮って育てるお茶ですが、被覆期間は玉露より短めです。
農林水産省は、かぶせ茶について、収穫前に1週間程度、茶園を被覆して作ると説明しています。
味わいとしては、煎茶と玉露の中間に位置づけると分かりやすいです。
煎茶の爽やかさを残しながら、玉露に近いうま味や甘みも感じられる。
そのため、日常のお茶より少し特別なものを飲みたいときに向いています。
てん茶と抹茶
抹茶は、粉にした緑茶です。
ただし、煎茶をただ粉にしたものが抹茶というわけではありません。
抹茶の原料になるのは、てん茶です。てん茶は、日光を遮って育てた茶葉を蒸し、揉まずに乾燥させて作ります。そこから茎や葉脈を取り除き、石臼などで細かく挽いたものが抹茶になります。
抹茶は茶葉そのものを粉末として飲むため、抽出液を飲む煎茶とは飲み方が異なります。
茶筅で点てて飲むほか、和菓子、スイーツ、ラテ、料理などにも広く使われています。
番茶
番茶は、一般に、煎茶よりも大きく硬くなった茶葉や、夏以降の茶葉などから作られる日常的なお茶です。
農林水産省は、番茶について、新芽が伸びて硬くなった茶葉や夏以降の茶葉から作られ、煎茶より渋みが少なく、あっさりした飲みやすい味と紹介しています。
地域によって「番茶」の指す範囲が違うこともあります。
日常の食事に合わせやすく、気軽に飲めるお茶です。
ほうじ茶
ほうじ茶は、煎茶や番茶などを強火で焙じて作るお茶です。
農林水産省は、ほうじ茶を、煎茶や番茶などを強火で煎じて作り、香ばしい香りとすっきりした飲み口を持つお茶として紹介しています。
焙じることで、緑茶の青い香りとは違う、香ばしい香りが生まれます。
食後、夜、甘いものと合わせるときなどに向いています。カフェインが比較的少なめで、刺激が抑えられたやさしい口当たりとも説明されています。
玄米茶
玄米茶は、煎茶や番茶に炒った玄米を混ぜたお茶です。
農林水産省は、玄米茶について、煎茶や番茶に炒った玄米を混ぜ、独特の香ばしい香りや味が特徴で、渋みが少ないと紹介しています。
お茶の渋みが苦手な人でも飲みやすく、食事にも合わせやすいお茶です。
玄米の香ばしさがあるため、熱めのお湯で香りを立たせる淹れ方も向いています。
茎茶、芽茶、粉茶
煎茶や玉露を作る過程では、葉だけでなく、茎、芽、細かな粉状の部分も出ます。
茎茶は、茎の部分を集めたお茶です。農林水産省は、茎茶について、茎の部分のみを集めたお茶で、独特の甘みがあり、初心者でも淹れやすいと紹介しています。
粉茶は、細かい茶葉から作られるお茶で、寿司店で出される濃い緑茶として知られることもあります。
これらは「副産物」というより、部位ごとの個性を楽しむお茶です。
釜炒り茶
多くの日本茶は、茶葉を蒸して酸化を止めます。
一方、釜炒り茶は、茶葉を蒸さずに釜で炒って作るお茶です。
農林水産省は、釜炒り製玉緑茶について、生葉を蒸さず釜で炒って作り、甘い香りとすっきりした味わいが特徴と紹介しています。
蒸し製の緑茶とは少し違う、香ばしく軽やかな雰囲気があります。
主に九州地方で作られるお茶として知られています。
日本茶の味を決めるもの
日本茶の味は、茶葉の種類だけでは決まりません。
次のような要素が重なって決まります。
茶葉の種類
品種
産地
収穫時期
栽培方法
蒸し時間
火入れ
保存状態
淹れる湯温
抽出時間
茶葉の量
たとえば同じ煎茶でも、浅蒸しか深蒸しかで印象が変わります。
同じ茶葉でも、70度で淹れるか、90度で淹れるかで味は変わります。
日本茶は、茶葉と淹れ方の両方で味が動く飲みものです。
ざっくりした淹れ方の考え方
最初は細かな作法よりも、次の感覚で十分です。
うま味を出したい → 低めの温度
香りを出したい → 高めの温度
渋みを抑えたい → 低めの温度、短め
きりっと飲みたい → 高めの温度
農林水産省の資料では、煎茶は80度くらい、かぶせ茶は70度くらい、玉露は50度くらいの湯温が例として挙げられています。
もちろん、これは絶対のルールではありません。
お茶は嗜好品です。
自分が「おいしい」と感じる温度と濃さを探していくのが一番です。
初心者向けの選び方
最初に買うなら、次のように選ぶと分かりやすくなります。
毎日飲みたい → 煎茶
濃くまろやかに飲みたい → 深蒸し煎茶
特別感を味わいたい → 玉露
香ばしく飲みたい → ほうじ茶
食事に合わせたい → 番茶、玄米茶
甘いものと合わせたい → 抹茶、ほうじ茶
渋みが苦手 → 玄米茶、ほうじ茶、深蒸し煎茶
急須で飲むのが面倒なら、ティーバッグから始めても構いません。
大切なのは、最初から完璧な作法を目指すことではなく、味の違いに気づけるようになることです。
保存の基本
日本茶は、湿気、光、熱、酸素、強い匂いが苦手です。
開封後は、密閉できる袋や缶に入れて、なるべく早めに飲み切るのが基本です。
冷蔵庫で保存する場合は、出し入れによる結露に注意が必要です。日常的に飲む分は常温の冷暗所で管理し、長期保存したい未開封品だけ冷蔵・冷凍を検討する、といった分け方が扱いやすいです。
日本茶を知ると何が変わるか
日本茶を知ると、日常の中で見えてくるものが増えます。
飲食店で出されたお茶が、煎茶なのか、ほうじ茶なのか分かる。
旅先で「この土地のお茶です」と言われたときに、少し興味を持てる。
和菓子に合わせるお茶を、自分で選べる。
急須で淹れる時間が、ただの水分補給ではなくなる。
日本茶は、難しい作法の奥にだけあるものではありません。
湯を沸かし、茶葉を入れ、少し待つ。
その短い時間の中に、かなり広い文化があります。
まとめ
日本茶は、ひとつの飲みものではなく、たくさんの種類と作り方を持つ文化です。
煎茶は日常の中心。
玉露はうま味を深く味わうお茶。
抹茶は茶葉そのものを飲む粉末茶。
ほうじ茶は焙じた香ばしさを楽しむお茶。
玄米茶は米の香ばしさを加えた親しみやすいお茶。
最初は、名前を覚えるだけでも十分です。
次に、味の違いに気づく。
その次に、湯温や抽出時間を変えてみる。
日本茶の入口は、湯呑み一杯ぶんの小さな場所にあります。
けれど、その奥には、産地、季節、道具、作法、菓子、器までつながる広い世界があります。